「こことか良くね?」
「…ちゃんと値段と場所を見てる?泊まるだけでも高いし、交通費もかかりすぎるよ」
「そんなこと行ってたら、旅行なんかできねぇじゃん」
「貯金が少ないサトが言うな」
外のうるさいセミの声も、店の中に入れば聞こえてこない。
緩やかな音楽に身を委ねながら、俺はアイスコーヒーを静かに飲む。
耳に入ってくる会話が、少しうるさいけれど……。
「じゃあ、ここは?」
「だーかーらー、沖縄に行けるほどお金持ってんの!?」
「はい、持ってません」
いや、すっげえうるさい。
俺は深いため息をついて、前にいる2人に目を向けた。