幼い頃から、物には困らなかった。
あれが欲しい、これが欲しいと、親に頼めば何でも買ってもらえたから。
だけど、いつだって、本当に欲しいものだけは手に入らない。
心が満たされることなど、一度もなかった。
泣きわめいて声に出せば、手に出来たのかもしれないけれど、変なプライドがあっていらないふりをしてしまったり。
そういうところは、今も変わっていないと思う。
高校に入ってから親友になった奴も、同じような一面を持っていた。
そいつの名前は、渡辺悟。
地元は違うけれど、一番、気が合う男。
背もそんなに高くはないし、ガキっぽい性格だから、たまに弟のように感じるときもあるけれど、俺にはない無邪気さと愛嬌の良さが魅力だなって思う。
黒い髪の毛に、日焼けしても赤くなるだけの白い肌。
性格や見た目は、俺とは正反対だ。