数時間、あっちこっち探したけど、広美を見つけることはできなかった。
俺はマンションに戻り、入り口にある花壇に腰掛けて、広美に電話をかけ続けている。
でも、彼女は案の定…出てくれない。
「あ、サト兄」
途方に暮れていると、自転車に乗った竜介が部活から帰ってきた。
「…怒ってる?」
顔を上げても目を合わせるだけで、何も言わず、また携帯を見つめる俺に、竜介はぎこちなく尋ねてくる。
空はもう暗く、風に流れる草木の音と虫の音が、より一層むなしさを引き立たせている。