車輪が、軽やかに回りだす。
去っていこうとする彼を、俺はあ然と見ていた。
…え?
あんなに、必死だったくせに…。
止めに行くのは、俺だけっすか?
「ちょっ…おい!」
小走りで追いかけながら呼び止める。
「俺、彼女を迎えに行かなきゃだし、時間ないんだよっ。まぁ、頑張って!」
竜介は遠ざかりながら、こっちを向いて、ブンブンと手を振る。
「マ…ジかよ」
あっけらかんとした笑顔を眺め、俺はポツンと立ち尽くした。
そして、眉間にしわを寄せながら、口を尖らせた。
「って、どこから探せばいーんだよ!!」
情けない声が、住宅街に響いていた。