着慣れた服に、履き慣れた靴。
普段、学校の始業時間に間に合わなくても急いだことのない俺が、あわただしく用意をする。
ズボンをはく時なんか、バランスを崩して、よろめくくらいに…。
なのに、マンションの下まで行くと、用意を急かしていたはずの竜介が「じゃあ」と言って離れていく。
「おい、どこ行くんだよ?」
俺はポカンと口を開けたまま、竜介に問いかけた。
すると、彼はキョトンとした顔で振り返る。
「俺、部活あるから」
そう言って、竜介は大きなスポーツバッグを自転車のかごに入れて、片足をペダルに乗せた。