俺はもう、広美に嫌われてるかもしんねぇし。
何度も、そう言い聞かせているのに…。
「…竜介」
ほんとに、なんで俺は…。
「こういうとき、少女漫画のカッコイイ男はどうすんだよ?」
なんで俺は、こんなにも広美が好きなんだろ…。
俺の言葉で、竜介は足を止めて、くるりと振り返る。
そして、にんまりと微笑んだ。
「もち、引き止めるっしょ」
その言葉を聞いて、俺はガバッと布団をめくり、起き上がる。
視界には、不思議そうに首を傾げる母親と、満面の笑みで足踏みをしながら、用意を急かす竜介。
広美からすれば、俺はただの幼なじみかもしれない。
でも、俺にとって広美は、誰にも渡したくないほどの女なんだよ。