みずたま(第3章まで公開)

…つらい。
彼女の引く境界線が、胸に突き刺さる。
無理なのかもしれない。
広美を振り向かせることなんか、できないのかもしれない。
でも…。
俺は深く瞳を閉じて、あごを前に出した。
乾いた唇が、そっと…重なり合う。
心臓が圧迫されるかのような感覚で、涙が出そうになった。
互いに、それ以上は動くこともなく、俺たちの時間は止まっている。
正確に、数えてはいない。
多分、5秒くらいしかたっていなかった。
でも、そのわずかな時間は、すごく長くて…。
“ただの幼なじみ”だった2人の関係を、大きく変えた。