みずたま(第3章まで公開)

それを眺めるうちに、俺の中にある抵抗感は、徐々に消えていく。
静かすぎて、扉の向こうの雑音がかすかに聞こえてくる。
帰宅した父親の声、あわただしく動く母親の足音、つけっぱなしにしているテレビの音。
それらは、俺たちに“禁忌”を感じさせていた。
「できねぇの?」
一向に近づいてこない彼女へ、俺は見下すかのように問う。
自分からは、したくなかった。
俺からキスをすれば、いかにも喜んでますって感じに見られるから。
がっついているとは思われたくない。
だから、まずは広美から動いてほしかった。