みずたま(第3章まで公開)

広美は両手で鞄の持ち手を握り締め、コクリとうなずいた。
俺はガッカリした気持ちになり、数回、まばたきをしながら、彼女から視線を外していく。
テーブルの上に置いていたガラスコップは、オレンジジュースが入っている部分だけ、水滴を浮かべている。
俺は部屋中に張り詰められた緊迫感を消すために、ジュースを一気に飲み干した。
続けて、皿に盛り付けられたフルーツを、細いフォークで豪快にさす。
黙々と食べる俺を、広美はその場から動くことなく、見つめている。
「食わねぇの?」
俺はかじりかけのフルーツを彼女に見せ、声をかけた。