みずたま(第3章まで公開)

健二は向かいのホームを見つめたまま、真顔で答えた。
「うん! なんか、健二くんって大人っぽいよね! サトなんか本当にガキだし。この前もね、一緒にDVDを観たんだけど…」
「広美ちゃん」
興奮状態のまま、広美は楽しげに話題を広げていく。
ところが、健二は冷めた表情で、その声を止めた。
「悟の話は、もういいよ」
健二は、自分を見る広美に、そう言い切った。
無表情のまま、言葉を詰まらせる彼女。
「今日さ、悟と喧嘩したから。ごめんね」
冷めた瞳は、一瞬で柔らかさを取り戻す。
健二はにっこりと微笑んで、両手を顔の前で合わせた。
広美の視線は、ふと彼の口元に注目する。