「やっぱ空いてるなぁ」
「平日だから、余計だよね」
館内は、点々と人がいるだけで、本当にガラガラだった。
「健二くんが言った通り、ここにして良かったね」
ポップコーンを手にした広美が、うれしそうに話しかけてくる。
健二はにっこりと笑みを返して、中央の席に腰掛けた。
そして、2人はたわいのない会話をしながら、照明が消えるのを待つ。
健二は心の中で、今日の悟の言葉を思い出していた。
『なんか…横取りされたのかと思って』
やっぱり悟も、他のやつらと一緒だった。
俺はいつも、こんな風に思われる。
アイツは、アイツだけは、違うと信じていたのに…。