彼はそう言って、広美が手にしていた財布を取り上げて、ストンと彼女の鞄の中に入れた。
「えっと、学生2枚で…」
健二はあわてる広美を放ったまま、チケットカウンターの向こうに声をかけていく。
「あ、払うよ!」
「いいよ、これくらい」
広美は再度、鞄から取り出した財布から、急いで千円札を出す。
だが、健二はその姿にクスクスと笑いながら、買ったチケットを差し出した。
「だって、これじゃ“友達”じゃないみたいだし…」
渋々、チケットを受け取る広美。