各駅停車しか停まらない駅。
狭い道路には買い物帰りの主婦と、1人でぽつりぽつりと帰宅する学生だけ。
駅前の並びでは、さびれたパチンコ屋と映画館がひっそりと建っている。
「ごめんね! 結構、待った?」
映画館の入り口で待つ健二の下へ、制服姿の広美が駆けつける。
「ううん。そんなに待ってないよ」
健二は顔を軽く横に振り、笑顔のまま答える。
こういうシチュエーションに、慣れきった様子の彼。
広美は照れくさそうに、うつむき加減でうなずいた。
健二はそんな彼女を置いて、数歩、前に行く。
そして、チケット売り場の真上にある、数枚のポスターを見上げた。