みずたま(第3章まで公開)

そう考えれば、ずっと理由がわからなかったあの件も、1本の線でつなぐことができる。
真奈は、別れる前、悟の部屋に幼なじみが乱入してきた後、自分が用無しになったかのように追い出された理由を見つけていなかった。
今思えば、悟はわざと、他の女との行為を幼なじみの女に、見せつけようとしていただけだったんだ。
それ以外に、理由なんて思いつかない。
真奈は下唇をキュッと噛んで、悔しさをこらえていた。
「あぁ、健二と一緒にいたっていう女の子?」
理子は思い出したかのようにうなずきながら、あいづちを打つ。
「なんかさぁ、ムカつかない?」
真奈は化粧ポーチから取り出したグロスを、唇にたっぷりとのせながら、低い声でささやいた。