みずたま(第3章まで公開)

だがその台詞は、健二の胸を切なく圧縮する。
彼は忘れられない少女と広美を重ね、忘れかけていた感覚を取り戻していた。
「じゃあさ…」
最初はただ、悟への当てつけでしかなかった。
自分のことを棚に上げて、自分を避ける彼に対して、ちょっと困らせてみようかなと思っただけだった。
しかし、話してみると、彼女は結構いい子で、ずっと自分の中にある影と一致した。
健二は沸きあがる感情にとまどいつつも、懐かしさを追い求めていく。
後に健二がささやく言葉に、広美もまた、頬をほんのりと赤らめていくのだった。