「はい!」
鳴り続ける電話が切れないうちにと、ドアを閉めると同時に電話に出る。
「忙しかった?」
「ううん。洗い物してただけだよ」
「そっか。急にごめんな」
「大丈夫だよ。どうしたの?」
息が少し荒い広美に、電話の相手は遠慮がちに話しかけてくる。
「いや、なんとなく。何してるのかなぁって思ったから」
そう言って、照れ笑いをするのは…健二。
「あ、そうなんだ」
連絡先を交換してからの初めての電話に、広美は少々、緊張していた。
「あ、そういえば…プレゼント渡した?」
会話が途切れかけた頃、広美は沈黙を避けるかのように話題を探していた。
その言葉に、健二は悟の存在を思い出す。