「姉ちゃん、電話ぁ!」
俺が帰った後、リビングで横になっていた竜介は、テーブル上の振動に気がついて、台所にいる姉に声をかけていた。
「え? あ、すぐ行く!」
鼻歌を口ずさみながら食器を洗っていた彼女は、すぐに水を止めて、タオルで手を拭いた。
「誰だろ? あ…」
まだ、ちゃんと乾いていない手で携帯電話を開く広美。
画面に点滅する文字は、男の名前だった。
「誰から?」
「あ、友達」
足元で寝転がる弟からの問いかけに、彼女はあいまいな返事をして、自分の部屋へと向かった。