俺は彼女の顔を見ることもできず、帽子の内タグを見た。
「…健二と同じ店で買ったんだな」
次々とかぶる2人の接点に、俺はいても立ってもいられず、気がつけばその言葉を口にしていた。
広美の顔を、まともに見ることができない。
今の俺って、どんな顔をしてるんだろ?
…絶対、醜い表情をしているに違いない。
男の名前を出したからか、それとも俺の顔色をうかがっているのか、竜介は静かに身を引いている。
「うん。偶然、街で会ったから。一緒に買おうってことになったの」
「それから会ったりしてんの? 正直に答えて」
あっけらかんと返す広美に、俺はムキになって問い続ける。
「え?…別に会ってないけど」