みずたま(第3章まで公開)

あきれた顔で竜介を見ていると、部屋のドアが開き、広美がケーキを持って入ってくる。
白い生クリームの上に飾られた、真っ赤な苺。
色通りどりのローソクにともされた火に息を吹きかけると、広美は部屋の電気をつけて、緑色の包装紙に包まれたプレゼントを手渡してくる。
「はい! これは、あたしから」
俺はそれを見て、眉間にしわを寄せた。
…健二からのものとまったく同じ包装紙。
「…ありがとう」
その件には触れず、礼だけを口にして、包装紙を開いていく。
そして目に映ったのは、紺色のニット帽。
「これからの季節にピッタリでしょ?」
隣で頬笑みかけてくる広美。
…健二と同じような台詞。