みずたま(第3章まで公開)

「最近、悟くんは一緒じゃないの?」
俺と真奈がバイトをしている頃、駅前にあるボーリング場で、理子は健二に問いかけていた。
「…あぁ、なんか避けられてる」
健二はボールに指を入れて、レーンに向かった。
ボールの勢いで、弾け飛ぶ10本のピン。
頭上にある画面が派手に騒ぐ中、健二は真顔で椅子に腰掛ける。
理子はチラリと彼を見て、迷いながらも話を続けた。
「悟くんの幼なじみと遊んでたから、じゃないの?」
理子はその言葉を置いて、立ち上がった。
健二がうっとうしそうにする表情を、見ないようにして。
「なんで知ってんの?」
健二は鋭い声で問い返す。
「真奈が、偶然見かけたって」
理子は面倒くさい女にならぬようにと、クールに答えた。
しかし、健二の反応は顔を見なくてもわかってしまう。
多分、干渉されるのを嫌う彼は、しけた表情で自分を見ているはず。
あせった理子は、気にしてないよと言うために振り返った。