みずたま(第3章まで公開)

機嫌が悪いことを隠して、ニコニコと接するのにも疲れてきた頃。
もう早く帰って、風呂に入りたい。
さっさと寝てしまいたい。
「幼なじみの子と健二くんのこと、気にしてるの?」
そっけない返事を繰り返しているうちに、俺と真奈の間には沈黙が流れていた。
すると、真奈は再び、俺の顔をのぞいて問いかけてきた。
その質問で、俺は初めて真奈の顔を見る。
「あれを見てから、ずっと機嫌が悪いから…」
真奈は俺から視線を外して、下を向いた。
家々が立ち並ぶだけの細い道、寂しく点々と並ぶ街灯。
先にある、電気に照らされたアスファルトを眺めながら、俺は口を開く。
「…別に」
その言葉を告げると、俺たちは無言になった。
つい最近まで、俺は幸せを噛みしめていたはず…。
なんで、こうなったの?
マジでイライラする。