みずたま(第3章まで公開)

常に胸の中にはモヤモヤした感情があって、何をしてもスッキリしない。
だから、真奈から話しかけられても、そっけなく返事をしていた。
「今日はちょっと遅くなったから、男の子は女の子を送ってもらえる?」
店が閉店し、タイムカードに手を伸ばしていると、店長の奥さんが俺たち男メンバーに声をかけてくる。
「じゃあ、俺は南町方面の子を送っていくわ」
「なら、俺は東町の方面かな? 帰り道から、少し離れるけど」
近くにいた男メンバーが、それぞれ話し合っている。
「悟、送ってもらっていい? あたしは北町だから、悟と同じ方向だし」
ジジジ…と機械にタイムカードを通していると、背後から真奈が、両手を合わせて頼んでくる。
「送り狼になるかもよ?」
俺はふざけた口調で、快くOKを出した。