みずたま(第3章まで公開)

俺が疑うような目でささやくと、健二は一瞬、笑うのをやめた。
「普通に、お茶してただけだよ」
そう言って、健二は頭をポリポリとかき、目をそらして、俺の側から離れていく。
健二の背中を目で追いながら、俺は深いため息をついた。
本当は、こんな風に疑いたくない。
健二はずっと前から俺の話を聞いていて、どれだけ広美のことを好きなのかも知っている。
そして、自分の彼女よりも俺を選んでくれていた。
だけど、広美のこととなると、普通じゃいられない。
誰にも盗られたくないし、健二にも近づいてほしくない。
もらったプレゼントの礼さえも言えなくなるくらい、昨日はショックだったんだ。
また、あの時みたいに、他の男を想う姿を見るはめになるんじゃないかって…考えたんだよ。
登校してきた生徒たちの声で、教室内は騒々しい。
ど真ん中の席にいる俺は、渡された腹巻を見ないようにして、静かに鞄の中へ詰めていく。