彼女はクシャッと笑うと、そわそわした素振りで手洗いへと急いだ。
残された健二は、テーブルにひじをついて、窓の外を見る。
暖かそうな服を着た人々が、縮こまりながらも先を急いでいる。
騒々しい街を眺めながら、手のひらで口元を覆う彼。
すると、ある人物が視界に飛び込んでくる。
「あ…」
思わず、手から顔が離れてしまう。
手に隠れていた唇は、柔らかくゆるんでいく。