みずたま(第3章まで公開)

俺は電話を切った後、急いで席を立つ。
「え、出ちゃうの?」と聞いてくる理子。
その隣で、健二は小さく笑いながら、手をひらひらと振っている。
「ごめんな!」
俺はあわただしく鞄を提げて、駆け足で店を出た。
「あんなに急いで、どこに行くんだろ?」
残された場所で、理子は不思議そうにシェイクを飲む。
「さぁ、どこだろうね」
健二は大体の事情を察しながらも、知らぬふりをしていた。
「…あたしも帰るね、バイトあるから」
突然、真奈が席を立つ。
「あ、じゃあ、また明日ね!」
そう言って、明るく見送る理子の隣では、健二が何かを疑っているかのような目で、去っていく真奈の後ろ姿をにらんでいた。