みずたま(第3章まで公開)

「そりゃ…いるよな」
高校生になってから、広美は少しあかぬけた。
髪の毛も茶色に染めて、化粧まで覚えて…。
いないほうがおかしい。
ていうか、可愛くなった彼女を、男が放っておくわけがない。
だけどさ、突然すぎて、息苦しいよ。
中学までは何でも把握できていたから、こんなショックを味わうことはなかった。
「俺だって彼女いるし、別に…」
家には帰らず、マンションの階段に腰を下ろして、景色を眺める。
住宅街の明かりは闇に埋もれて、細かな星に変わっていく。
今まで付き合ってきた女は、全員、向こうから“好き”と言ってきた。
はっきり言って、女に不自由はしていない。
なのに、好きな女だけは、絶対、手に入らない。
「…ダッセェ」
7階から見下ろす夜景は、今の気持ちを表すかのように、小刻みに揺れている。