みずたま(第3章まで公開)

その話は、彼女と別れた後に、健二の口から聞いていた。
高校に入学した頃、駅で真奈が落とした定期券を、俺が拾ったらしい。
もちろん、俺はそのことをひと欠片も覚えていない。
でも、真奈はその日から毎日、駅で俺を探していたらしい。
そして、健二と知り合った理子のプリクラ帳から、偶然、俺の姿を見つけ、紹介してくれと頼んだという。
「…そっか」
改めてそれを説明する彼女に、俺はそんな言葉しか返せなかった。
そうであっても、俺の気持ちは1人の幼なじみへと固まっていたから。
頭の中では、どう断ればいいのかを考えていた。