みずたま(第3章まで公開)

同時に、凍りつく体。
健二はゆっくりと振り返り、彼女たちに引きつった笑顔を見せる。
「サト…」
久しぶりに聞く、真奈の声。
俺は観念し、ため息をついて、後ろを見た。
「なんで逃げるの?」
ブスッとしたふくれっ面で、理子が健二をにらんでいる。
俺たちはフロント係に声をかけ、もう一度、部屋を取った。
小音量の音が流れる部屋に、ギスギスした空気が広がっていく。
「いや、逃げてたわけじゃなくて、退室時間になったからさぁ」
「ふーん」
言い訳をしている健二を、怪しむ理子。
その隣で、俺は気まずい表情で、真奈からの視線に耐えている。