みずたま(第3章まで公開)

「何とでも言えば? あたし、彼氏できたし」
広美は気に入った服を腕にかけて、クローゼットの扉を閉めながら、そう言った。
一瞬で、俺の表情は凍りつく。
…え?
男、できたの?
「そうなんだ。…良かったじゃん」
平静を装って、引きつる口元を隠すかのように、笑う。
でも、手のひらはじんわりと汗をかいていた。
「うん。今日、付き合うことになったの。優しい人だよ、かっこいいし」
浮かれながら、のろける彼女。
…めまいがした。
だって、今まで広美には彼氏がいなかったから。
片思いしか、していなかったから…。