広美の存在を知ったのは、幼稚園に通いだした頃。
同じマンションに住んでいるということで、親同士が仲良くなったのがキッカケ。
世間話をしている母親の足元に隠れながら、俺は彼女の姿をジッと見ていたんだ。
ぽっちゃりした顔に似合う、大きな瞳。
黒い髪は耳の上で2つに結われ、彼女の可愛いさはハッキリ見えていた。
仲良くなるのに、そんなに時間はかからなかったと思う。
小学校の低学年まで、マンションの近くにある公園や互いの家で、毎日のように遊んでいた。
その頃の広美は、国語・算数・体育と、何でも人並以上にできて、クラスの男子からもひそかに人気があった。
俺は、そんな彼女の身近な存在。
自慢げに、2人の仲を、周りに見せつけていたこともあった。
でも、次第に周りから冷やかされるようになり、友達から仲間外れにされるのが怖くて、俺は広美から離れてしまった。
"広美"から"河野"と、呼び方まで変えたりして。
寂しがる彼女に背を向けたまま、俺は男友達としか遊ばなくなった。