そう言って、笑い合っていた時を思い出す。

強い雨音の中、タクシーに乗り込む人々を眺めて、ため息をつく。

そして、数時間後、まことの無事を確認できた。

だけど、まことは傷だらけの姿を隠すため、「帰れ」と告げてきた。

あたしは「帰らない」と言い切って、知らない町を歩き続ける。

傘を持たないあたしを心配して、まことは迎えに来てくれた。

あのとき、涙で視界はグチャグチャやったけど、まことの優しさだけは、はっきりと見えていた。

…あの場所をみる度、その夜を思い出すよ。

でも、幸せな時間は…長く続かなかった。