黒のシックな姿見に、あたしと彰斗さんが写る。
「あ、やっぱり似合う」
笑顔で彰斗さんは、あたしの唇に視線を落とした。
「なんだか、大人ぽくなっちゃった…」
ちょっと照れ臭くて、鏡越しに彰斗さんに目を向ける。
すると、
「もっとよく見せて?」
あたしの腕を掴むと、自分の方へ振り向かせた。
「由依奈ちゃん、ごめんな。一週間も連絡出来なくて」
「え?いいんです。気にしないでください」
あたしを見つめる彰斗さんに、慌てて両手を横に振る。
「だって、あたしたち、そういう関係じゃないんですから…」
“連絡くれなかった”なんて、責める権利はあたしにない。
「そう言われると、なんか寂しいな」
眉を下げて笑いながら、あたしの頬に触れた。
「じゃあ、“そういう関係”になってもいいかな?」