アドレスを消去して、携帯を閉じた時、見慣れないドアが目についた。


「ん…?」


それは、テーブル席のもっと奥にある。


薄い青色の照明に照らされて、かろうじてドアと分かった。



元々、店内は足元がやっと見えるくらいの薄暗さ。


まして、通い始めて一週間のあたしは、まだ店内を把握出来ていない。


「ねえ、ユウくん。あのドアって?従業員用とかじゃないよね?」


あたしが指差した方向を見ながら、ユウくんは「ああ!」と言って答えた。


「あそこは、VIPルームだよ」