こういう時って、彰斗さんに最初に降りてもらうのよね。
“開”ボタンを押そうと、手を伸ばした時だった。
あたしより早く、彰斗さんがボタンを押した。
「いいよ。先に降りて」
あの夜にも見せてくれた笑顔で、そう言う。
「あ、ありがとうございます!」
飛び出る様に、美加は降りたけど、あたしは呆然としてしまった。
「ちょっと、由依奈!何をボーッとしてるの?」
美加に腕を引っ張られ、無理矢理降ろされたあたしは、振り向きたい気持ちを我慢して、会社を出る。
やっぱり、優しいよ彰斗さん。
ヤバイ。
ちょっと、胸がキュンとする。

