そんな話を聞いてしまって、平気でいられるはずがない。
彰斗は一体、誰が好きなの?
誰が心の中にいるの?
家へ着いた頃には、まさにあたしは、頭の先から足の先までずぶ濡れだった。
「由依奈!?どうしたんだよ?遅いから心配してたんだぞ」
ドアを開けると、彰斗が飛んで来た。
後から気付いたけれど、帰る間に数回、あたしに着信を残している。
「とにかく、シャワーを浴びろよ。風邪を引く」
腕を引っ張り、バスルームへ連れて行こうとする彰斗の手を、あたしは振りほどいた。
「由依奈?」
怪訝そうな彰斗の顔を、あたしは涙を流しながら見つめる。
「こうやって心配してくれるのも、風香さんを重ねてるから?」