“昼間、何を落としたんだよ?”


ゆうべ言われて、本当の事を話すと、


“無用心にポケットに入れてるからだよ”


と、怒られてしまった。


それで、貰ったシルバーのチェーンに、指輪を通したというわけ。


元々、あたしに渡すはずのチェーンだったらしく、“早く渡しておけば良かった”と言われてしまった。



「それでは、会議を始めます」


スタンドに掛かったマイクに向かい、彰斗はそう言った。


「よろしくお願いします」


全員の声がハモる。


「では、まず資料の一ページ目から…」


会議を進める彰斗は、夜とは違って“社長”の顔だ。


みんなも熱心に、何かを書き留めている。


それなのにあたしは、内容よりも彰斗の声や、表情や、時折見せる穏やかな笑顔ばかりに気を取られていた。