「彰斗を待ってるかと思ったけど」
「え?いきなり何ですか?」
スーツ姿から、仕事終わりなのかな?
新藤商事は、こことはまったく違う方向にあるのに、何で出くわすんだろう。
「今日は、彰斗に会う約束をしてるんだ」
「そうなんですか?」
まるで、あたしの心を見透かした様に言った。
じゃあ、今夜遅くなるのは、龍之介さんに会うからなんだ。
「どうせ、あいつの事だから、あんたに遅くなるって言ってるんだろし、だから待ってると思ってたんだけど…」
どこからどこまでも失礼な人。
「いちいち、待ってる真似なんてしません」
キッパリとそう言って、身を翻すより先に、龍之介さんの言葉が耳に入ってきた。
「あんたさ、彰斗の家に転がり込んでるんだろ?」

