空(第2章まで公開)

「いくでぇ!」
今日は、3年間の中学生活…最後の日。
「3…2…1ッ」
古い校舎を背に、仲間たちと寄り添って…記念に写真を撮る。
「もう、絶対泣くやろなって思ってたぁ」
感情にもろい明美を、沙代と由加はおかしく笑っている。
「なんで2人は泣けへんのぉ?」
ハンカチを濡らしながら、顔を真っ赤にしている明美。
「ほら、広也がおるでっ」
由加はニヤニヤとしながら、校門の外で騒ぐ男の子たちを指さした。
「ちょっと待っててな!…広也ぁ!」
2人に見送られ、明美は好きな人の元へ走っていく。
沙代は、目に映る広也と明美の姿を、ぼんやりと眺めていた。
嬉しそうに、カメラに向かって微笑む彼女。
…あたしの3年間は、健太郎で埋め尽くされている。
なのに、もう…形に残すことができない。
「沙代…あのな」
由加は沙代の横顔を眺めて、何かを言おうとした。
だが、ぼんやりとしていた彼女には、その声は聞こえていなかった。
「最後やから、散歩してくるわ」
沙代は由加の台詞に声を覆い被せて、その場から動きだした。
由加は言いかけた言葉を飲みこんで、無理やり微笑む。
そして、ひらひらと手を振り、校舎に向かう彼女の背中を悲しい瞳で見つめていた。