「合格したよ」
笠井家之墓、そう書いてある灰色の墓石に、沙代の影が太く映る。
「受かったよ」
健太郎が…見たいって言うから。
絶対って言うから。
「…なぁ」
何度も、この場所に足を運んだ。
何度も、こうやって…声をかけてきた。
「喜んでるん?」
でも、いつだって、彼は何も言ってくれない。
健太郎の声は…聞こえてこない。
「遠出…どこにする?」
…いつだって独り言。
「ディズニーランド?…砂漠?……どこでも良いから、連れてってよ」
最後に2人で過ごした、海の日を…思い出す。
あの笑顔と温もりは、もうあたしを包むことはない。