沙代は動きを止めて、無言で彼を見る。
『絶っ対、あいばやって!』
生き生きとした顔で、何度も相羽と繰り返す彼に、沙代は疑問を持った。
『なんで、いきなり相羽なん?なんかあるん?』
進学をしない健太郎が、高校に興味を持つなんて…おかしい。
なんか裏があるはず。
…また女?
沙代は疑いの目で、彼をジィッと睨んだ。
『あの制服は、沙代のために作られたようなもんやで。絶対、似合う!!』
健太郎は満面の笑みで、興奮している。
恥ずかしげもなく、歯の浮くような台詞を簡単に口にする彼。
沙代は照れて、聞き流したふりをした。
…あのときは、変に刃向かって違う高校を記入した。
でも進路相談を前に、決めたのは…相羽だった。
彼が見たがっていた制服姿。
見せることは…出来なくなったけど。
健太郎がくれた言葉…1つ1つを思い出す度に、会いたくなる。
「健太郎、ほんまに…似合うかな?」
沙代は、ネックレスをぎゅっと握りしめた。