空(第2章まで公開)

由加は目を伏せたまま、顔を横に振っている。
「言わん方がいい。…今の沙代にはきついって」
真顔でつぶやく由加。

明美は眉間にしわを寄せたまま、先を行く沙代の背中を見下す。
そして、口元にキュッと入れて、渋々…うなずいた。
「帰らへんのぉ?」
沙代が、下から呼びかけてくる。
「今、行くっ」
由加は明るく答えて、沙代の元へ駆けつけていった。
残された明美は、広也から聞いた話を、胸の奥にしまい込んだ。

『俺ら、言うてたんやし。あいつ、井上のこと…守ったんやろなぁって』
沙代が教室の中にいる間、広也は真剣な顔で口を開いた。
『守った?』
由加は、彼の言葉が理解できず、首を傾げた。
『…あいつが自分を守ってハンドルをきってたら、井上が車に当たってたはずや。事故るって思った瞬間、あいつは避けずに、後ろを守って…真っ直ぐ突っ込んだ』
広也は目を閉じたまま、悔しそうに語り出す。
『じゃあ、沙代が事故らんように、健ちゃんは…自分から突っ込んだってこと?』