数分後。
「なぁ、沙代。…クリスマスさぁ、夜中になるかもしれへん」
機嫌が直ったことを見計らい、健太郎は怒らせないようにと、慎重にささやいた。
「は?」
甘い時間は、一瞬にして消えていく。
沙代は眉をひそめて、彼を見た。
「…暴走」
予想通りの反応に、健太郎は弱々しく答えていく。
「今年も!?」
学校でも有名な健太郎は、いわゆる…ヤンキー。
毎年…イベントの時期に、彼は仲間たちと一緒に、暴走行為をしている。
その為、一昨年も去年も、クリスマスや正月…全部のイベントは、それを終えてから2人で過ごしていた。
「去年“もう来年は、1日中一緒やで”って言うたやんか!」
「…ツレに断りにくいし」
声を張り上げると、健太郎は弱々しく…うつむいた。
沙代は、先ほどと同じ理由を口にする彼に呆れて、はぁっと息を吐く。
「ほんまごめん!!」
彼は両手をついて、頭を下げている。
怒る気力さえ失った沙代は、口を尖らせて…黙り込んだ。
「沙代ぉ、お願い!」
深く詫びてくる彼に、沙代はそっぽを向く。