「あん…た、沙代っ！！」
母親は今にも泣き出すかのような顔で、沙代に走り寄る。
その後、血相を変えた青い顔で…涙を流す母親に、沙代は抱えられ病院に連れ込まれた。
…命を落とすことはなく、彼女は無事に手当てを受けることが出来た。
家まで走るタクシーの中、無表情で呆然とする娘の瞳を、母親は下唇を噛みながら見つめていた。
家に到着し、玄関のドアを閉めた後、突然、母親は沙代の頬を強く叩いた。
彼女は叩かれたまま、顔を上げてはこない。
「…あんたは、生きるの」
母親は、沙代の肩をがっしりと掴み、説得するかのように強く話しかけた。
だが、彼女は魂が抜けたかのように…黙ったまま。
「…生きなさいっ」
母親の手に、グッと力が入る。
すると、変わることがなかった沙代の表情が、もろく崩れていく。
目にいっぱいの涙を浮かべ、沙代は顔を真っ赤に染めていく。
「…生きてっ」
いつも元気な母親が、初めて見せた表情。
沙代は、大声で泣きわめいた。