「…ごめんねぇ。…あの子、部屋に閉じこもったままで」
2日後、健太郎の死を耳にした明美と由加は、沙代の家にやってきた。
母親はひきつった表情で、2人に謝る。
「そうですか。…わかりました」
2人は小さく頭を下げて、とぼとぼと玄関を後にする。
「…沙代」
明美と由加は家の門を出て、沙代の部屋を切なく見上げていた。

「沙代?…明美ちゃんと由加ちゃん、家に来てくれたよ?」
母親は沙代の部屋の前に立ち、はれものに触れるかのように…声をかけていく。
「…沙代ちゃん?」
返事がない彼女の様子を伺い、母親は再び呼びかける。
だが、沙代の返事はない。
「沙代…?」
母親の顔色は、次第に曇り始める。
扉の向こうに異変を感じ、母親は急いでドアノブに手をかける。
「っ…。沙代!!」
部屋に入ると、そこには泣きつかれたかのように、呆然と天井を眺める沙代がいた。
彼女の片手には、赤いカミソリ。
もう片方の手首からは、赤黒く…濃い血がぽたりぽたりと、布団に流れている。