「あ!あかんやん、目ぇ開けたらぁ」
視界に映る健太郎は、すごく優しい顔でケラケラと笑っている。
沙代は、そっと左手を見下ろした。
薬指を飾るのは、可愛いピンク色のダイヤが埋め込まれた…シルバーリング。
…のどの奥に何かが詰まったかのような、息苦しさ。
沙代の瞳に、じんわりと涙が浮かび上がる。
「…ありがとう」
はにかむように笑って、沙代は彼を見上げた。
「ずっと、俺のそばにおってなぁ」
健太郎はそう言って、壊れものをそっと包み込むかのように、沙代を胸の中にうずめて…ささやいた。
…中学最後のクリスマス、沙代は健太郎の腕の中で、最高の幸せを感じていた。
単車に乗っていた彼は、誰よりもまぶしくて、すごくカッコ良かった。
そして、今、こうやって抱きしめてくれる彼は、世界で1番…素敵な恋人。
ずっと、こうしていたい。
沙代は、この幸せが…ずっと続くと思っていた。