舞は、店に入ってからも、メニューをなかなか決められない。
聖は、ひじをついたまま、身を寄せた。
「どれとどれ?」
彼女と同じように、メニューをのぞく。
「これとこれ」
彼女が指さしたのは、よく似たパスタ。
聖は、くだらないと言わんばかりに、体勢を元に戻した。
「…一緒やんけ」
「違うわ! こっちはツナやけど、これは鶏肉やもん!」
しらけた口調でつぶやくと、彼女は声を張り上げて否定する。
そして、ハァッと息を吐き、もう一度メニューを見て、ぼやく。
「もういいわ。…ツナにする」
しょんぼりとうつむいたまま、呼び出しベルに手を伸ばす舞。