「なんか…つらいことあったんやろなぁって…思うのに。何て言うたらいいんか…わからんかって」
猿のような真っ赤な顔を、聖は目を細めて見上げていた。
舞は、垂れてくる鼻水を、必死にすする。
こんな風に泣いてくれる舞を、聖は愛おしく思った。
そして、すすりきれていない鼻水を目にし、フッと笑いかける。
「お前、俺のこと…気にかけてくれとったやん。…充分やよ」
今まで見たことのない…彼女の素顔。
聖は、優しい瞳で舞を見つめる。
「あと、お前との口喧嘩…楽しいし、元気でるし」
その言葉をかけると、舞は真顔になる。
そして、再び…表情を崩し、涙を流した。