「いや、輝緒んちにあるから…重なるし。また今度」
すがりつくかのような母親の誘いも断って、聖は実家を後にした。

…マンションまでの距離を、聖は原チャリにまたがり、真剣な表情で走る。
「…別れたらええやん」
ひとり言をつぶやいて、彼は切ない目をした。
…聖の父親は多額の借金を作り、“迷惑をかけたくない”と言って、家を出ていった。
だが、返済をしていたのは…最初の2~3カ月だけで、今は連絡さえもよこしてこない。