聖は何も答えず、黙って…彼女を見つめる。
舞の中で、こらえていた不安は…涙へと化していく。
…輝緒と美衣子の過去を知らない彼女は、きっと不安で仕方なかったんだろう。
聖の胸の奥で、舞に対しての同情心が生まれる。
そんな中、突然…玄関の鍵を開ける音が聞こえてくる。
「…輝緒やな」
聖は、慌てて素手で涙をぬぐう彼女に、そっとティッシュの箱を手渡した。
「まぁ、お前も…輝緒のこと好きなんやろ? …頑張れや」
聖はそう言って、玄関に向かった。
「おかえりぃ。今日、皆けぇへんやって。電話あった」
せめて、泣きやむ時間くらいは…。