「…暑苦しいねん、お前。はよ入れや」
その言葉を置いて、聖はスタスタとリビングに戻った。
文句を言いたげな目で凝視しながら、舞は靴を脱いでいる。
会話などない…シーンとした空気が漂う中、時計の針の音が妙な静けさを物語っている。
聖は、舞に背を向けて、淡々と足の爪を切っていた。
「…仕事は?」
息の詰まる沈黙に耐えきれず、舞は口を開く。
「休み」
彼女の心中に気づいていても、聖はわざと素っ気ない返事しかしなかった。